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第1部 一章【財前姉妹】その6 第十四話 アカネとメグミ

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-04-30 10:00:00

75.

第十四話 アカネとメグミ

 杜若(かきつばた)アカネは杜若家の次女で小説が好きな子供だった。特に好きなのは推理小説で探偵ものには目がなかった。そんな小学生だったので世間には少々変わった子だと思われた。

 ある日、何を思ったかホームセンターに行った際に乾電池をポケットに入れてレジを通さず持ち帰ってしまった。それは無意識のうちの万引きだったが、この時こう思ってしまった。

(万引きって気付かれないんだな)と。

 そして、それ以来(探偵練習ごっこ)と称して、やれ針金を万引き。やれボルトを万引き。と必要のないものを(名探偵ならこのくらいやってのけるはずだ)というよく分からない理由で窃盗した。

 しかし、それが何回か成功してエスカレートし、次は下州屋という釣具店でフライフィッシングの疑似餌セットを盗もうとした……が。

「ちょっと来てもらおうか」

 店長と思われる人物に腕を掴まれる。

「ポケットの中、見せて」

「…はい」

 アカネは素直に降参して疑似餌セットを出した。

「これだけで全部?」

「全部です」

「いま警察呼ぶから。あとは警察の人に任せるから、この部屋で反省して待ってなさい。私は忙しいからもう店番に戻るけど、二度とやらないように!」

「…はい」

数十分後

 お巡りさんが到着する。アカネは近くの派出所に連れて行かれた。

「なんであんな必要ないものを盗もうとしたのかな?」

「…探偵ごっこでした」

「え?」

「名探偵に憧れてて……探偵ならあれくらいわけなく盗み出しそうだなって」

「呆れた、それは探偵じゃなくて怪盗じゃないか。敵だよ敵」

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